診療支援
診断

肥厚性幽門狭窄
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Hypertrophic Pyloric Stenosis
奥山 宏臣
(大阪大学大学院教授・小児成育外科)

診断のポイント

【1】生後1か月前後の男児に多い。

【2】噴水様の非胆汁性嘔吐,体重減少,脱水症状。

【3】右上腹部にオリーブ様腫瘤を触知。

【4】腹部単純X線写真で胃泡の拡張と腸管ガスの減少。

【5】腹部超音波検査で幽門筋厚が4mm以上,幽門管長が15mm以上。

症候の診かた

【1】脱水,低栄養:脱水のため大泉門は陥凹している。体重減少を伴う低栄養状態にあることが多い。

【2】上腹部の膨満:腹壁を通して拡張した胃と蠕動の亢進(visible gastric peristalsis)が観察される。

【3】嘔吐:噴水状嘔吐(projectile vomiting)が特徴的症状である。発症時期は新生児期早期から数か月のこともあるが,1か月前後のことが多い。

【4】腫瘤触知:右上腹部にオリーブ様腫瘤を触知する。胃内容を吸引したうえで患児の安静時に行うことが必要である。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査

❶嘔吐を頻繁に繰り返すと,胃酸の喪失により低クロール(Cl)血症や代謝性アルカローシスの所見を呈する。

❷最近では早期に発見されるようになったので,典型的な低Cl血症がみられることは少なくなった。

【2】腹部単純X線写真:胃泡は拡張し,十二指腸以下の腸管ガスは減少する(図1)。

【3】上部消化管造影:造影剤の高度の胃排出不良と,狭窄部を示すstring sign やumbrella signが特徴的所見である(図2)。

【4】腹部超音波検査

❶肥厚した幽門筋を直接描出することができるので,最も確実な診断方法である。

❷幽門筋厚が4mm以上,幽門管長が15mm以上が診断の目安とされている(図3)。

確定診断の決め手

【1】発症時期(生後1か月前後)と性別(男女比約5:1)。

【2】噴水様の非胆汁性嘔吐:典型例では哺乳後ほぼ毎回嘔吐する。

【3】体重減少を伴う低栄養状態。

【4】オリーブ様腫瘤を右上腹部に触知する。

【5】

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