診断のポイント
【1】低血糖とは,血漿グルコース濃度(血糖値)60mg/dL以下(全血の場合は55mg/dL以下)の状態である。
【2】Whippleの3徴(空腹時の意識消失発作,発作時の血糖が50mg/dL以下,ブドウ糖投与による症状改善)が重要だが,症状の言えない乳幼児では低血糖を疑って検査を行い,低血糖が認められれば原因を精査する。
【3】生後48時間以内に低血糖を呈した児は,一過性かどうかの評価が必要である。
【4】小児の低血糖症は先天性疾患が多く,高インスリン血症,拮抗ホルモン異常症(成長ホルモン分泌不全症・副腎皮質機能低下症・グルカゴン血症),糖原病,脂肪酸代謝異常症,糖新生異常症,ケトン性低血糖症がある。
【5】小児の低血糖症の基礎疾患診断のためには,低血糖時の検体(critical sample)が必要である。
緊急対応の判断基準
【1】中枢神経症状は血糖値が50~70mg/dLまで低下した際に起こり,また頻回に低血糖を起こしている児は低血糖症状が出にくいことから,小児の低血糖症の血糖値の治療目標は,70mg/dL以上である。
【2】重症低血糖症の場合には,10%ブドウ糖2mL/kgを静注して,10%ブドウ糖を年齢相応の維持量で投与すべきである。
【3】高インスリン血症の場合には,グルカゴンを0.5~1.0mg筋注(静注)すると,血糖値は10~15分以内に上昇し,1時間程度維持することが期待される。
【4】出生後数か月は,頻回の低血糖症により発達遅滞を引き起こすので,早期診断・治療が不可欠である。内科治療で低血糖を管理できない場合には,外科治療のできる病院に早期に搬送する。
症候の診かた
【1】低血糖症状
❶交感神経症状(動悸,四肢の震え,感情不安,発汗,空腹感,四肢知覚異常)と中枢神経症状(頭痛,幻覚,集中力低下,けいれん,視力障害,意識混濁,昏睡)がある。
❷血糖値が55mg/dL