診療支援
治療

思路障害
disorder of train of thought
岩波 明
(昭和大学教授・精神医学)

Ⅰ.思路障害の概念

【定義】

 思考とは,一定の目的を志向し,目的に適合した概念を順次想起しながらこれらを結びつけ,判断や推理によって課題を分析していく精神活動である.思考は,刺激事態のなかから問題点を抽出し(問題性),それに対する外的反応をいったん停止し(延滞性),問題解決に向かって内的過程を進行させる(志向性)とともに,その際,前提から結論までが論理的なつながりをもつように監視する(論理性)という特徴をもっている.思考目標に到達するまでの思考の進行過程を「思路」という.

 思考の異常は思考内容の異常と,思考形式の異常(思路の異常と思考の体験様式の異常)に分類される.思路の異常(思路障害)とは,思考の進み方が障害されることをいう.思考は出発点から目的に向かって順次進むが,この思考の過程が停止したり適切な順番で進行しないものが「思路障害」である.思路障害にはさまざまな種類があるが,一般に思路障害といえば,思考のまとまりの悪さ(連合弛緩)を意味することが多い.また思路障害は,統合失調症における基本的な障害であると考えられている.

【分類】

A.観念奔逸

 躁病,躁状態の際に出現する.観念が次々に湧き起こり,その時々の偶然の内外の連想,例えば本人のそのときの思いつきや偶然のその場の出来事,言葉の音の類似性などによって思路が左右され,思路が最初の目標から外れていき,思考全体のまとまりがなくなる形の思考障害をいう.談話促迫を伴うことが多く,患者は急き込んで話すため,さえぎることが困難で,また新しい考えを話すことに一生懸命で,話しかけの文が中途半端に途切れることがある.

 観念奔逸では,近接する個々の観念の間には関係があるが,それらが一定の目標に向かってうまく配列・結合されず,全体としての思考のまとまりが欠けることが多い.観念奔逸は軽いときは話のまとまりが悪い程度であるが,高度の場合には思考のまと

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