診療支援
治療

パニック発作
panic attack
永田利彦
(なんば・ながたメンタルクリニック・院長(大阪))

【定義】

 パニック発作は身体症状を伴い,死に至るかもしれないという予期を伴うほど,突然襲ってくる重度の不安である.その症状や体験の仕方は個々によって異なるため,普遍的な描写はない.しかし,その不安の強烈さが特徴的である.

 パニック発作の特徴は,少なくとも初めての発作は突然に起こることである.急激に不安・恐怖が頂点に達する.動悸,頻脈,呼吸の浅さ,めまいといった顕著な身体症状を呈し,それが最も主な臨床症状であることも多い.そのような不安や身体症状は,少なくとも本人にとっては,突然やってきて,あっという間に頂点に達する.そしてそのような強烈な身体症状に反応し,何かとんでもなく恐ろしいこと,例えば,死んでしまう,自分のコントロールができなくなる,気が狂ってしまうなど破滅的な結末を恐れる.そこで,その恐怖に強く反応し,逃避行動を起こしたいとの切迫感に襲われ,一刻も早く安全な場所(病院の救急室や自宅)に行かなければと思い,唐突な行動を起こす.パニック発作は長続きせず,多くは10-20分で終息し,1時間を超えることはまれである.ところが,その短い時間の1分1分が,患者にとってはとてつもなく長い時間に感じられている.

 パニック発作の身体症状では,パニック発作の一級症状とよばれスクリーニングに有用なものとして,頻脈と動悸,めまい・目がくらくらする・失神する感じ,息切れ,窒息感が挙げられ,他の一級症状には胸部の不快感・胸痛,発汗,震えが含まれる.二級症状としては熱感(ほてり)・冷感,しびれ感・ヒリヒリ感,吐き気・胸焼けが挙げられる.このような一級症状のうち,呼吸症状(息切れ,窒息感,過換気となる)が目立つ場合は予期しないパニック発作であることが多いとされる.

 パニック発作の最中に強烈な不安のために,身体的と精神的の両方で悲惨な結末に至るのではないかと恐怖する.身体的な結果として予期されるのは

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