診療支援
治療

感情鈍麻
blunted affect
針間博彦
(東京都立松沢病院・精神科部長)

【定義】

 感情鈍麻とは感情反応性の低下による感情生活の平板化,貧困化を指す.通常,表情や話し方といった患者の表出を通じて,感情表現や情動的反応の乏しさが客観的に判断される.感情の平板化flattening of affect,感情の浅薄さshallowness of affect,情動鈍麻emotional blunting,情動反応の鈍麻blunting of emotional responses,無感情apathyともよばれる.DSM-5では新たに「情動表出の減少diminished emotional expression」とよばれる.感情鈍麻はさまざまな原因による認知症,器質性パーソナリティ障害,精神作用物質使用による残遺性パーソナリティ障害,そして統合失調症にみられる.この症状は器質性の病態では原則として非可逆的な変化として生じるのに対し,統合失調症では必ずしも非可逆的ではない.

【分類】

A.統合失調症における感情の障害

 統合失調症における感情反応性の障害としての感情鈍麻/感情の平板化は,いわゆる陰性症状に含められる.統合失調症における感情反応性の障害には,感情反応の減弱である感情鈍麻のほかに,感情反応の方向性の変化である感情倒錯parathymia,感情調節能力の障害である感情の硬直化stiffening of affectなどがある(表1)

1.感情鈍麻/感情の平板化

 表情変化の乏しさ,身ぶりの減少,自発的動きの乏しさ,アイコンタクトの乏しさ,声の抑揚の欠如などによって示される,情動表現の範囲の明らかな減少である.感情鈍麻は感情の浅薄さと冷淡さ,自分自身と他者の安寧や将来に対する無関心として表れる.

 感情鈍麻の著しいものは感情荒廃とよばれる.感情を心的感情と身体感情に分けると,感情荒廃は特に他者に対する愛情,信頼,同情,共感といった心的感情の空虚化をもたらす

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