◆疾患概念
【定義・病型】
妄想性障害は,かつて非統合失調症性の妄想性精神病という意味で用いられた「パラノイアparanoia」とほぼ同義である.単一の妄想あるいは関連した一連の妄想が出現し,それが通常持続性であり,時に生涯続くことを特徴とし,器質性の障害,統合失調症,気分障害として分類できないさまざまな障害が含まれる.安定した明確な妄想体系を呈するが,妄想以外の面では人格は多くの正常な側面を保っている点が,精神病症状に加えて広範な人格の解体がみられる統合失調症とは異なる.幻覚が存在することがあるが,通常顕著でなく,妄想性の誤認や錯覚としばしば区別困難である.妄想に対する二次的反応として,抑うつなど気分の異常がみられることがある.妄想の内容によって下記の類型に下位分類される.これらが組み合わさっている例もある.
1.被害型 persecutory type
周囲の中立的な事柄を曲解することから被害妄想が生じ,不安や刺激性を呈する.疾病が進行すると家族,医師,公的機関などが妄想体系に組み込まれ,衝突が生じやすくなる.暴力に訴え,重大な危険を生じることがある.
2.好訴型 litigious type
患者が実際に受けた不法な行為や不利益に基づいて,自分の権利が侵害されていると確信し,法的措置によってこれを是正することだけを一方的に求め,次第に被害妄想が広がっていく.
3.誇大型 grandiose type
自分には富や権力があるなどと確信する.精神科治療を求めることは少ない.現実と衝突して二次的に被害妄想が生じ,周囲に対して悪意を抱くことがある.
4.心気(身体)型 hypochondriacal(somatic)type
中心的主題が身体の機能あるいは感覚に関するものであり,以下の種類がある.
1)皮膚寄生虫妄想:皮膚の表面あるいは内部に虫が這っているという妄想的確信.しばしば幻触を