診療支援
治療

抗精神病薬の減量・スイッチングの方法
reduction and switching of antipsychotics
山之内芳雄
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神保健計画研究部部長)

A.抗精神病薬の減量・スイッチングの必要性

 抗精神病薬は,統合失調症をはじめ双極性障害など,患者の状況に合わせて幅広く処方されている.その最適用量もさまざまいわれているが,米国の医療指標においては,100以上のRCTのレビューに基づいた知見より,クロルプロマジン(CP)換算で1日300-1,000mgとされている.しかし病状不安定などで,やむを得ず抗精神病薬が追加され,結果多剤大量処方になってしまうこともしばしばある.わが国の2012(平成24)年の診療レセプト調査では,4割を超える統合失調症入院患者に3剤以上の抗精神病薬が処方されており,国際的にも顕著なものとなっている.今後,患者の高齢化や医療安全意識の高まりを踏まえ,顕著な多剤大量処方の是正,無効時に追加ではなく適切なスイッチングを行う必要があると思われる.

B.減量は1つずつゆっくりと

 抗精神病薬の安全で現実的な減量だが,1種類ずつ,高力価薬は1回にCP換算50mg以内,低力価薬はコリン性作用の離脱を考慮して同25mg以内でゆっくりと減量し,様子をみながら1週間以上間隔をあけて行うとよい.筆者らが163例の統合失調症患者を対象に行った臨床研究で,このSCAP(safety correction of antipsychotic polypharmacy and high-dose)法とよばれる方法にて,精神症状・副作用・QOL・身体安全性すべてで悪化しなかったことを確認した.

 この研究結果からは,減量速度は1週間当たりCP換算平均9mgと非常に緩徐であるが,24週間かけて平均20%の減量ができていた.なお,外来患者の利便性や剤形の実施上の問題を考慮して,2週間以上の間隔をあけることを条件に,2倍の減量量を認めたが,多くの症例では1回この上限量を減量し,その後4週間様子をみる減量パターンだった(図1)

 ただし,臨床研

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