診療支援
治療

遅発性ジスキネジアへの対応
management of tardive dyskinesia (TD)
稲見康司
(西条道前病院(愛媛))
堀口 淳
(島根大学教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義・類型】

 遅発性ジスキネジア(TD)は,数か月以上(多くは3か月以上)にわたる抗精神病薬などの長期投与中に,口の周囲や舌,四肢,体幹などに出現する不規則で多様な不随意運動と定義されている.TDの原因となる薬物は抗精神病薬が多く,特に高力価の定型抗精神病薬による場合が多いが,非定型抗精神病薬や抗うつ薬,ドパミン遮断作用を有する抗潰瘍薬,制吐薬によっても発現することが知られている.

【病態・病因】

 ドパミン・ニューロンが長期的に遮断された結果,線条体におけるシナプス後ドパミン受容体の感受性が亢進し,ドパミン神経系の抑制・促通系の均衡に障害が生じていることが主な原因と考えられているものの,TDの発現機序の詳細は現時点では不明である.その他,GABA神経系の機能低下,ノルアドレナリン神経系の亢進,神経細胞障害が原因とする説などがある.

【疫学】

 TDの発現率は日本人が白人よりも高く,ま

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?