◆疾患概念
【定義・病型】
DSM-5によると,気分が異常かつ持続的に高揚し,開放的で,またはいらだたしい,さらに活動性の亢進が生じる,いつもとは異なった期間が,少なくとも1週間持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい).そして,自尊心の肥大,睡眠欲求の減少,多弁,観念奔逸,注意散漫,目標指向性の活動亢進,困った結果につながる可能性の高い活動への没頭のうち3つ(気分が単にいらだたしい場合は4つ)が存在する.
社会的な機能も著しく障害され,対人関係に著しい支障をきたしたり,入院が必要であったり,あるいは精神病性の特徴(幻覚や妄想)を有する.症状は,物質(乱用薬物,投薬など)や一般身体疾患(甲状腺機能亢進症など)によるものではない.
なお,躁病エピソードを有する気分障害を双極Ⅰ型障害と呼ぶ.
【病態・病因】
躁病エピソードや双極性障害の病態生理や病因は解明されていない.最近では,脳由来の神経栄養因子brain-derived neurotrophic factor(BDNF)や神経保護因子が不足し,正常気分を維持する神経回路(前頭前野,前部帯状皮質,海馬,扁桃核,基底核,視床などから構成される)の機能も低下し,気分の逸脱が生じる結果,躁病相やうつ病相が生じるという仮説がある.
【疫学】
一般人口における双極性障害の生涯罹患率が0.5-1.5%であるのに比して,双極性障害の患者(発端者)との関係が親子(一親等)であれば5-10%へ上昇し,一卵性双生児であれば40-70%ときわめて高く,遺伝の影響を強く示唆する所見となっている.
【経過・予後】
双極性障害の発症は,15-24歳の間が最も多い.60歳を超えて発症した場合には,何らかの器質疾患や身体疾患が背後に隠れている可能性を追求すべきである.双極性障害には再発が多く,約90%の患者は再発する.経過はさまざまで,10-15%の患
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