診療支援
治療

季節性感情障害
seasonal affective disorder (SAD)
西田 朗
(医療法人同仁会海星病院・院長(島根))

◆疾患概念

【定義・病型】

 季節性感情障害は,多くの場合は,秋冬期にエピソードが増悪・再発し,春夏期に寛解する季節性の感情障害である.まれに,夏期に反復するエピソードのあるタイプもある.1980年代より感情障害の一亜型として提唱され,DSM-Ⅳでは気分障害の「季節型」の特徴をもつものとされた.DSM-5では抑うつ障害群と,双極性障害および関連障害群の各々の特定用語「季節型」に2分類されている.エピソードの発症と寛解は,少なくともある2年間に季節的関係をもち,同一期間内には非季節性エピソードがなく,生涯を通じてのエピソードの回数が,季節性が非季節性よりも十分に多くなければならない.季節性の心理社会的ストレス因(例:季節性の失業や学校の予定)によって説明できるときは適応されない.症状の特徴は,うつ病エピソードが非定型症状で,気力減退,過眠,過食,体重増加,炭水化物渇望などがあるが診断に必須ではない.治療上では,高照度光療法が有効という特徴がある.

【病態・病因】

 エピソードの発現に季節性があることから,外的な日照時間の変化と,個体の概日リズム位相後退または前進との関連が推定されている.高照度光療法により概日リズムが補正されることにより,治療反応,再発予防ができる基盤と推定されている.日照低下との関連でビタミンDの関与も推定されている.神経伝達物質であるセロトニンやカテコールアミンの関与の報告もある.

【疫学】

 有病率は欧米では1-10%で女性に多い.冬季季節型の有病率は緯度,年齢,性別により違いがみられ,高緯度地方で増大する.季節性感情障害が,再発性うつ病と双極性障害のどちらに多いかは不明である.しかし,双極性障害の各病型のなかでは,双極Ⅰ型障害よりも双極Ⅱ型障害に多いようである.

【経過・予後】

 再発性であることが特徴であり,診断基準となっている.短期的介入経過の報告は多いが,長期予

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