◆疾患概念
【定義・病型】
月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)は,DSM-5において初めて,独立した疾患として「抑うつ障害群」のカテゴリーに分類され,抑うつ障害群の下位診断名の1つとして,本文中に診断基準が記載されるようになった疾患である.
月経前以外の時期には,PMDDではないほかの女性と同様の質の高い生活ができるが,月経前の数日から2週間にわたり,抑うつエピソード患者と同様の重篤な精神症状が出現することにより,仕事(職場),学校,家庭などでの日常生活や人間関係に,大きな支障をきたしている.ただし,これらのPMDDの症状は,月経が始まるとともに,すべてがすみやかに改善し,月経のあとの1週間は,ほぼ完全に症状が消失していることが特徴である.そして,次の月経前にも,同様のPMDDの諸症状を呈する.これらのサイクルが,適切な治療を行わなければ,1年以上にわたって続く疾患がPMDDである.
【病態・病因】
PMDDでみられる抑うつ症状は,そのほとんどが過食や睡眠過多などの,非定型の特徴を伴うものであることが特徴である.すなわち,PMDDを一言で表現すると,「月経の前ごとに(非定型)うつ病を呈する疾患」である.
PMDDの原因は,現在のところ不明である.しかし,症状が黄体期の後半にのみ反復して認められることより,プロゲステロン(黄体ホルモン)やその代謝産物のアロプレグナノロンが関与している可能性が高い.これらの物質によってセロトニン系神経の機能が低下し,うつ病と同様の症状が出現するという説がある.月経が発来し,これらの物質の濃度が低下すると,セロトニン系神経の機能が正常化し,抑うつ症状もすみやかに改善すると考えられている.
【疫学】
PMDDは,生殖可能年齢の女性(月経のある女性)の3-8%に認めるとされる.DSM-5によれば,
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