◆疾患概念
【定義・病型】
社交不安症(SAD)は,他人の注視を浴びるかもしれない状況に対して顕著で持続的な恐怖感を抱き,自分が恥をかいたり,恥ずかしい思いをしたり,拒絶されたり,他人に迷惑をかけたりして否定的に評価されることや不安症状を呈することを恐れる病態である.このため,社会的状況を回避することが多くなり,日常生活に困難をきたす.
DSM-Ⅲ,DSM-Ⅲ-Rでは,SADはsocial phobiaという診断名であったが,DSM-Ⅳからはsocial phobia(social anxiety disorder)と変更された.DSM-5では,social anxiety disorder(social phobia)となり,SAD が主な診断名となった.日本語表記については「社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)」とされている.DSM-Ⅳでは,恐怖がほとんどの社会的状況に関連している場合を全般性と特定することになっていたが,DSM-5からは,恐怖する状況の多さはSADの重症度に関連する要因と考えられるため全般性を特定するのではなく,人前で話をしたり演技をしたりする行為状況のみに状況が限定されるものをパフォーマンス限局型と特定することになった.
【病態・病因】
神経伝達物質としてはセロトニンとドパミンの関与が指摘されている.扁桃体,前部帯状回皮質,島皮質においてセロトニン5-HT1A受容体結合能が低下しているとの報告や,線条体においては,ドパミンD2受容体とドパミントランスポーター結合能が減少しているという報告などがある.
そのほか,GABA,グルタミン酸の関与についても検討されてきている.機能画像研究では,表情課題,スピーチ課題などで扁桃体の過活動が多く報告されており,感情を刺激する表情課題での扁桃体の活動性の高まりは,SAD症状の重症度と関連することも報告されている.また,
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