◆疾患概念
DSM-5によれば,解離性健忘dissociative amnesiaとは,心的外傷的ないしはストレスの強い性質をもった出来事についての想起が不能であり,通常の物忘れでは説明ができない.ストレスの強い出来事とは,例えば幼児虐待,夫婦間トラブル,性的葛藤,法律的問題,経済的破綻,自殺企図などである.健忘に加え,目的をもった旅や道に迷った放浪のように見え,同一性の障害や自伝的情報の健忘などが認められれば,解離性健忘に「解離性遁走を伴う」と特定する.
【経過】
解離性健忘のなかには比較的すみやかに記憶を回復する群のほかに,その後の経過によっては健忘以外の解離症状が目立つようになる群もあり,後者は他の特定される解離症や解離性同一症(→)と診断されることもある.
◆診断のポイント
解離性健忘にはいくつかの類型がある.全般性健忘generalized amnesia(全生活史健忘allgeme