診療支援
治療

離人症性障害
depersonalization disorder
白川美也子
(こころとからだ・光の花クリニック・院長(東京))

◆疾患概念

【定義・病型】

 離人症depersonalizationは,統合失調症,うつ病,心的外傷後ストレス障害(PTSD),パニック障害,物質依存,極度のストレス時,疲労状態など,さまざまな疾患や病態において見いだされる非特異的な症状であり,離人症性障害は離人症が全面的に前景に出ており,除外基準となる疾患の併存がないものをいう.

 その特徴は意識において,知覚が統合されないことにあり,大きく外界意識の離人症と内界意識の離人症に分けることができる.前者は主に現実感喪失など「自己が外界を知覚する体験の変容」(例:景色に薄いベールがかかっているよう,景色が芝居の書き割りのように見えるなど)であり,後者は離人感,体外離脱体験,自己像視など「自己が自らを知覚する体験の変容」(例:自分が自分でないようである,自分をいつも上から見ているなど)である.

 本障害は,DSM-5においては離人感・現実感消失症/離人感・現実感消失障害として,「解離症群/解離性障害群」に,ICD-10においては離人・現実感喪失症候群depersonalization-derealization syndromeとして「他の神経症性障害」に分類されている.

【病態・病因】

 離人症状が特にトラウマ後のPTSDや解離性障害のなかの一型として起きる場合,圧倒的な恐怖のために知覚を統合できない一次解離から派生し,行動の主体としての自我とそれを観察する自我の分離が起きた二次解離の状態に相当する.合目的的には,「あたかも」そこから離れたように感じることで苦痛を感じなくするという効果があるが,通常の知覚も感じなくなるため,そのことによる苦痛感が強い.

 発症の契機が明確にわかる場合と,特に誘因がなく起きたとみなされている場合があるが,よく聴取すると,誘因がない,あるいは非常にささいなことを契機に起きた場合も,それ以前の小児期早期にトラ

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