診療支援
治療

パーソナリティ障害の精神療法
psychotherapy for personality disorders
岡野憲一郎
(京都大学大学院教授)

【定義】

 パーソナリティ障害(PD)の精神療法は,パーソナリティの偏りや異常により社会生活や対人関係に障害をきたしている人々への,言語的なかかわりを主体とした治療的アプローチである.ただしPDにはさまざまな種類があり,またその障害の程度にも個人差がある.さらには本人の治療へのモティベーションもさまざまに異なるために,その精神療法のあり方について一括して論じることは難しい.そこで本項では,ある程度病識と治療動機をもち合わせている症例を前提として論じることとする.

【アセスメント-「重ね着」状態をみる】

 PDには多くの複雑な要素が関与するために,そのアセスメントは時に大きな困難を含む.PDは併存症を伴うことが多いが,それらの症状の消長はPDの表現のされ方にさまざまな影響を与えうる.過度に依存的で自己中心的な振る舞いの目立つ患者が,気分障害による感情の起伏が抗うつ薬などの使用により抑えられたあとに

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