診療支援
治療

性嗜好障害
paraphilias
小畠秀吾
(国際医療福祉大学大学院准教授・臨床心理学)
尾畠知里
(国際医療福祉大学大学院・臨床心理学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 性対象や性行動の正常/異常の区別は明瞭ではなく,その判断には慎重であるべきだが,性嗜好の偏りのために本人あるいは周囲が著しい苦痛を覚える場合には臨床的関与の対象となる.DSM-5では,パラフィリア障害群として,①人間ではない対象物,②自分自身または相手の苦痛または相手の恥辱,③子どもまたは他の同意していない人に関する,強烈な性的興奮の空想,性的衝動,または行動の反復を性嗜好異常の基本特徴とし,さらにその行動,性的衝動,空想には,臨床的に著しい苦痛や,社会的,職業的,または他の重要な領域の機能に影響を与えたり,または他者に影響を与えているとしている.その下位カテゴリーとして,窃視障害,露出障害,フェティシズム障害,窃触障害,小児性愛障害,性的マゾヒズム障害,性的サディズム障害,異性装障害を挙げている.

【病態・病因】

 特定の対象に関する性的空想や衝動が高まり,満足や興奮を求めて性的行動化に至ることもある.これらの行動はしばしば法に抵触し,小児に対する強制わいせつや,下着盗,公然わいせつ,痴漢などの犯罪に結びつく.

 病因は特定されていないが,小児性愛やサディズムには小児期の外傷体験や愛着形成不全が関係することが示唆されている.また,精神分析的観点からは,フェティシズムは「去勢の否認」の機制として説明される.一方,行動心理学的観点からは,性発達期に特定の対象と性的興奮が結びついた経験から,その後,その対象を空想しながらマスターベーションを行うようになり,射精に伴う性的快感に条件づけられて特定の性嗜好が強化されていくと理解される.

【疫学】

 障害の性質上,秘匿されることが多く,一般人口中の有病率は明らかではない.性的マゾヒズムで男女比が1対20と推定されているが,それ以外の性嗜好障害は女性で診断されることはほとんどないとされる.

【経過・予後】

 小児期-青年期早

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