診療支援
治療

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
attention deficit/hyperactivity disorder(ADHD)
渡部京太
(広島市こども療育センター)

◆疾患概念

【定義・病型】

 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)の基本的特徴は,米国精神医学会のDSM-5に従うと,不注意,多動性,衝動性という3種類の主症状の存在によって定義され,神経発達症群に分類されている.DSM-5での大きな変更点は,自閉スペクトラム症autism spectrum disorder(ASD)とADHDとの併存を認めたことである.主症状が12歳未満に2つ以上の状況においてみられる場合に診断される.主症状の組み合わせから,「混合して存在(過去6か月間,不注意,多動性-衝動性を満たしている場合)」「不注意優勢に存在」「多動・衝動性優勢に存在」の3タイプに分類することは変わりないが,DSM-5では下位分類ではなくあくまで現在の表現型を示すのみになった.さらに症状および機能障害の程度により,重症度を3段階で評価することが新たに加わった.

【病態・病因】

 近年,遺伝学研究,神経機能画像検査,認知機能検査などの発展から,ADHDの生物学的基盤を示唆する研究が報告されている.Sonuga-Barkeは,2003年にdual pathway modelを提唱し,実行機能の障害とともに報酬系の障害である“報酬系の強化障害”を提議した.その後,時間的不注意や段取りの悪さを特徴とする時間処理障害を3番目の特徴として加えたtriple pathway modelを提唱している.さらに分子遺伝子研究から,ADHDの発症リスク遺伝子としてドパミントランスポーターdopamine transporter(DAT),ドパミン受容体のD4〔D4 dopamine receptor(DRD4)〕,D5〔D5 dopamine receptor(DRD5)〕など7つの遺伝子関与を指摘し,双生児研究のメタ解析からADHDの平均遺伝率を76%と推定した.これは統合失調症や双極性障害

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