◆疾患概念
【定義・病型】
BPSDとは,認知症患者にみられる認知障害以外の,知覚,思考内容,気分あるいは行動面における症状の総称である.BPSDには,幻覚,妄想,興奮,易刺激性,うつ,不安,アパシー,睡眠障害,徘徊,攻撃的言動,食行動異常などさまざまな症状が含まれる.BPSDは患者と家族の心理的苦痛をもたらし,在宅生活を困難にさせる一因となる.
【病態・病因】
BPSDは認知機能障害に加えて,患者の元来の性格傾向や,患者と家族との人間関係をはじめとする環境要因から発展することが多い.例えば記憶障害のため「しまったはずの場所に財布がない」と考え,「(日頃から関係がよくない)嫁が盗んだに違いない」と物盗られ妄想に発展する.認知症が高度になると着脱衣や入浴の介助が理解できず「何か恐ろしいことをされる」と恐怖を感じ,興奮や暴力に至る.また認知症疾患では,脳内でさまざまな神経回路や神経伝達系の障害が生