診療支援
治療

高齢者のパーソナリティ障害
personality disorders in the elderly
三山吉夫
(大悟病院老年期精神疾患センター長(宮崎))

◆疾患概念

【定義・病型】

 パーソナリティとは,その人を特徴づける行動パターンであるとされるが,パーソナリティの概念を科学的に述べることは難しい.高齢者のパーソナリティ障害には,もともと有していたパーソナリティ障害を高齢期になっても引き継いでいる状態と,それまでは問題にならなかった人が,高齢期になって後天性(原因は問わない)に,パーソナリティに変化をきたし環境への適応がうまくいかなくなったことで問題となる高齢者のパーソナリティ障害(人格変化とよばれる状態も含む)とがある.高齢者のパーソナリティ障害の多くは後者のパターンで,認知機能障害を伴うことが多く,感情・衝動の調節障害で社会適応性の変化として表現されることが多い.高齢期になって問題になるパーソナリティ障害の原因には,①加齢要因,②脳の器質的病変(生理的加齢は除く)が大きく関与するが,この鑑別は必ずしも容易ではない.パーソナリティ障害の背景の検討は,その後の対応や予後にも関連してくる.加齢要因によるパーソナリティ障害では,もともとパーソナリティに偏りの存在していた人が,加齢とともにその偏りがより増強されることが多い.この状態は,人格の尖鋭化とよばれる状態で,日常生活に大きな支障をきたすことは少ない.「パーソナリティ障害」の場合は,自他ともに病的状態とされ,生活障害をきたしていることが多い.

【病態・病因】

 加齢とともに中枢神経系では前頭側頭葉,辺縁系に老化が起こりやすい.この部位の障害は,高齢者の人格変化としてしばしばみられる頑固,自己中心的,保守的,心気的状態の背景になりやすい.もともとは問題とされるようなパーソナリティではなかった人が,高齢期になって問題となる場合は,多くは器質性脳障害の発症(頭部外傷,慢性アルコール依存症,認知症を起こす疾患など)に伴うことが多い.いかなる脳障害もパーソナリティ障害の原因となる.脳の障害部

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