◆疾患概念
【定義・病型】
抗グルタミン酸受容体抗体を伴い非ヘルペス性かつ非傍腫瘍性の急性辺縁系脳炎を,自己抗体介在性急性可逆性辺縁系脳炎autoantibody-mediated acute rever-sible limbic encephalitis(AMED-ARLE)という.類似の臨床を呈する疾患として抗NMDA受容体脳炎がある.後者は当初,卵巣奇形腫ovarian teratoma(OT)を伴う傍腫瘍性脳炎という位置づけだったが,現在では半数以上でOT陰性とされている.OT陰性例の臨床像はAMED-ARLEとほとんど同じである.
【病態・病因】
AMED-ARLEの病態には,抗グルタミン酸受容体抗体がかかわると考えられる.具体的にはNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)のサブユニットGluRε2(NR2B)に対する抗体(抗GluRε2抗体)である.一方,抗NMDA受容体脳炎では,抗体はNMDA受容体を発現させたHEK293細胞などで検出され,細胞膜上のサブユニットNR1のN末端を認識する.抗NMDA受容体脳炎の女性患者では約半数にOTを伴い,その場合は傍腫瘍性といえる.一方,AMED-ARLEは主として傍感染性辺縁系脳炎である.
【疫学】
「急性脳炎・脳症のグルタミン酸受容体自己免疫病態の解明・早期診断・治療法確立に関する臨床研究」(高橋班)の疫学調査によれば,ウイルス性脳炎(22%),傍感染性脳症(AMED-ARLEを含む)(25%),傍腫瘍性脳炎・脳症(8%),膠原病合併例(4%),その他(41%)である.わが国における推定罹患数は,急性脳炎・脳症が年間約2,000例,傍感染性脳症は約550例と見積もられる.AMED-ARLEは男女比2:3で女性,特に若年女性に多い.なお,抗NMDA受容体脳炎の報告では,男女とも小児例が少なくない.
【経過・予後】
臨床症状
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