◆疾患概念
【定義・病型】
多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄疾患で,病変が時間的,空間的に多発する.多くは再発・寛解を繰り返し(再発・寛解型MS),初期には完全寛解することが多いが,やがて完全寛解が得られず徐々に進行性の経過をとるようになる(二次進行型MS).まれに最初から徐々に進行し時間的多発性が不明瞭な症例がある(一次進行型MS).
欧米白人では脱髄斑が大脳,小脳,脳幹,視神経などに多発するタイプがほとんどである.わが国を含むアジア地域には視神経と脊髄を侵すタイプがあり,視神経脊髄炎neuromyelitis optica(NMO)とよばれる.その多くにアクアポリン4(AQP4)の抗体が上昇していることが発見され,独立した疾患であるとみなされる.NMOは失明に至るほど重篤な視神経障害,横断性脊髄炎を特徴とし,病変の壊死傾向が強い,髄液の細胞数が高値,オリゴクローナルバンドが陰性,MRIで脊髄に3椎体以上の長い病巣を示す,などの特徴がある.
【病態・病因】
MSの急性期病変は単核球浸潤を伴う炎症,肥胖グリアの増生,脂肪顆粒細胞の浸潤と斑状脱髄(髄鞘の崩壊と軸索の残存)を特徴とし,脳室に接する部位の静脈周囲白質に好発する.慢性期病巣には炎症は目立たず,線維性アストログリオーシス,髄鞘の再生がみられる.NMOでは壊死傾向が強く軸索障害も強く,アストロサイトのAQP4が消失している.
MSの病因はミエリン抗原に対する自己免疫(細胞性)が,NMOはAQP4に対する自己免疫(液性)が原因と考えられる.
【疫学】
欧米白人に多く,有病率は高い所で人口10万人に対し100に達する.わが国の有病率は1980年頃まではNMOも含めて人口10万人に対し5前後とまれな疾患であったが,近年MSが増加し人口10万人当たり10-15となっている.NMOは変わらない.MSの増加は生活スタイルの欧米化が
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