診療支援
治療

求心路遮断性疼痛
deafferentation pain
土井永史
(茨城県立こころの医療センター・院長)
米良仁志
(東京都保健医療公社荏原病院・麻酔科部長)

◆疾患概念

【定義】

 求心路遮断性疼痛とは,感覚神経系の障害によって感覚低下部位を中心に生じた疼痛を指し,組織損傷による侵害受容器の刺激に基づく侵害受容性疼痛nociceptive painと対比される.持続的な灼熱痛と発作性電撃痛,allodynia(通常は痛みを生じさせない軽い接触などの刺激により激痛が生じる状態)を認め,モルヒネ抵抗性ないし耐性を示す.就寝中には痛まないことが特徴的である.帯状疱疹後神経痛,視床痛など,いまだ有効な治療法が確立されていない難治性疼痛が多く,長期間にわたり日常生活上著しい制限を受けている症例も多い.これらの患者のなかには,反応性にうつ状態を呈する者も少なくない.

◆診断のポイント

 病歴ならびに上記症状から明らかであるが,サーモグラフィ・SPECTを用いて,痛みの部位の皮膚温低下,痛みと対側の視床血流量低下を確認する.一方,表1に示すような日常生活動作と抑うつ気分などの評価を行うことは,治療上不可欠である.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 三環系抗うつ薬ないしSNRIによる薬物療法,ならびに認知行動療法的アプローチを基本とし,麻酔科との協力による集学的治療体制が必要である.上記症状に対して,抗うつ薬は一定の治療効果をもつが,その奏効機序は十分解明されていない.薬物療法が効果を示さないか,抑うつ症状が顕著な場合には,電気けいれん療法()を考慮する.電気けいれん療法を施行するにあたっては,十分な術前評価に基づき,危険因子に応じた適切な全身麻酔管理を行うことが不可欠である.鎮痛効果の持続は数か月であるが,この難点は1-2か月に1回の維持療法的電気けいれん療法に導入することで克服できる.

B.電気けいれん療法の適応

 表1に慢性疼痛に対する電気けいれん療法の筆者らが考える適応基準を示す.求心路遮断性疼痛においては,痛みの中継核である対側視床の血流量が低下

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