◆疾患概念
【定義・病型】
抗不安作用をもつ薬剤には,ベンゾジアゼピン(BZ)系抗不安薬,5-HT1A受容体部分作動薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),さらには一部のβブロッカーも含まれる.また,睡眠薬として使用される薬剤は,BZ系薬剤,非BZ系薬剤,メラトニン受容体作動薬,オレキシン受容体拮抗薬,バルビツール系薬剤などがある.しかし一般的に,抗不安薬といえばBZ系薬剤を意味し,睡眠薬についてもいまだBZ系薬剤が中心である.非BZ系睡眠薬は,化学構造はBZ系とは異なるものの,BZ受容体に結合することで作用を発現するため,その機序はBZ系薬剤と類似することが多い.本項では,薬剤の構造の違いの詳細を論じているわけではないため,これらを厳密には区別せず,“主にBZ系薬剤に起因する精神症状”ということでまとめて述べた.また,BZ系薬剤は抗不安作用,鎮静・催眠作用,抗けいれん作用,筋弛緩作用の4つをもち,その作用の強さにより,抗不安薬あるいは睡眠薬に分類される.しかし,通常の臨床場面では,抗不安薬を睡眠薬として使用することも多いため,この両者を特に区別せず記載している.
【疫学】
最初に開発された抗不安薬はバルビツール系薬剤である.しかし,耐性を形成しやすく薬物依存に至る可能性が高いこと,大量服薬で呼吸抑制をきたして生命にかかわることがあるため,その使用には注意が必要であった.1960年代に発売されたBZ系薬剤は,その安全性から急速に普及し,多くの種類が開発され現在に至っている.しかし,近年,多くの不安障害治療のガイドラインでは,BZ系薬剤による依存の危険性が強調され,第一選択薬とはされず,使用期間も短く制限されるようになった.それに代わって,セロトニン系薬剤が第一選択となってきているものの,わが国の2007(平成1
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