◆疾患概念
【定義・病型】
抗パーキンソン病薬によって出現する精神症状を総称して「抗パーキンソン病による薬剤性精神障害」という.パーキンソン病は運動障害以外に非運動障害の1つとして精神障害を呈する疾患である.パーキンソン病の精神障害は疾患自体によって呈する,つまり中枢神経系の変性・脱落などの器質的変化によって生じる内因性と,抗パーキンソン病薬の有害事象として出現する外因性の2つがある.これら2つの病態ははっきり区別することは困難であるが,おおむね前者が20%,後者が80%といわれている.抗パーキンソン病による薬剤性精神障害は,薬剤起因性精神障害,レボドパ起因性精神障害,抗コリン薬起因性精神障害,ドパミン作動性精神障害といわれることもある.
抗パーキンソン病薬によって出現する精神症状は,幻覚や妄想などの精神病が主であるが,最近punding(常同行動の1つで,病的物集めなど意味のない行為を固執的に反復すること)や病的賭博などの衝動制御障害などの報告も多い.
【病態・病因】
抗パーキンソン病薬によって出現する精神障害,主として精神病には,神経薬理学的に3つの神経伝達系の機能異常が,精神病の発現に関与していると推察されている.つまり,ドパミン作動性神経,セロトニン作動性神経,コリン作動性神経系である.ドパミン作動性神経系には,黒質-線条体ドパミン神経のほかに,中脳-皮質-辺縁系ドパミン神経があり,これらのドパミン神経は前頭葉機能や感情機能に深くかかわっている.抗パーキンソン病薬による発現機序としては,中脳-皮質-辺縁系ドパミン神経は,黒質-線条体ドパミン神経よりも変性し難いため,ドパミン作動薬などの補充により,その中継核である側坐核のドパミン受容体が相対的に過剰な刺激を受けることと,長期にわたるドパミン受容体の間欠的な刺激により側坐核のドパミン伝達性が亢進していることが考えられている
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