診療支援
治療

性周期に伴う精神症状
menstrual cycle-related psychiatric symptoms
川村 諭
(東京慈恵会医科大学講師・精神医学)
中山和彦
(東京慈恵会医科大学教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 性周期に伴う精神症状を発現させる病態とその成因は多種多様であり,確立した病型分類は存在していない.本項目では,月経前症候群premenstrual syndrome(PMS)の診断と治療について述べる.

【病因・病態】

 月経周期を有するほとんどの女性が月経前に経験する何らかの身体的変調や不快気分が日常の活動に影響を及ぼすほどに重症化したものがPMSである.病因仮説として,ジヒドロプロゲステロンdihydroprogesterone(DHP)の代謝物でありベンゾジアゼピン様作用を有するアロプレグナノロンallopregnanolone(ALLO)に対するGABAA受容体の反応性低下が想定されている.

【疫学】

 月経年齢にある女性の5-8%が中等度以上のPMS症状をきたす.

【経過・予後】

 症状出現期間は月経周期後半の数日間-2週間であるが,多くの場合,明らかな症状は,月経開始6日前に出現し始め月経開始2日前にピークに達する.怒りの爆発とイライラが最も耐え難い症状であり,他の症状に先行して出現する.

 報告されている気分障害とのlifetime comorbidityは30-70%に上り,特に産後うつ病や更年期うつ病の重要な発症危険因子である.

◆診断のポイント

 米国産婦人科学会の診断基準では,過去3回の月経周期のいずれにおいても,月経開始前5日間に以下の精神症状および身体症状の少なくとも1つが存在する場合にPMSと診断される.診断序列は,精神症状としての①抑うつ,②怒りの爆発,③イライラ,④不安感,⑤混乱状態,⑥社会的ひきこもり,身体症状としての①乳房痛,②腹部膨満感,③頭痛,④四肢のむくみである.さらに,これらの症状は,月経開始後4日以内に消失し,少なくとも月経開始13日目までは再発しないこと,何らかの薬物療法やホルモン剤摂取,ドラッグやアルコールの使用によ

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