診療支援
治療

神経ベーチェット病
neuro-Behçet disease
若山吉弘
(昭和大学名誉教授)

◆疾患概念

【定義・病型】

 神経症状を合併したベーチェット病(以下B病)で,再発性の口腔粘膜や陰部のアフタ性潰瘍,結節性紅斑や毛嚢炎などの皮疹,再発性のぶどう膜炎に,中枢神経症状を呈する.中枢神経系では脳幹障害が多く,脊髄,基底核,小脳,大脳皮質障害もみられる.頭痛発熱など髄膜炎様症状を伴うことが多い.

【病態・病因】

 遺伝的素因,免疫異常が重要である.患者ではHLA-B51の陽性率が高い.インターロイキン(IL)-8,IL-10,CD28遺伝子の多形が本症と関連する.IL-1α,IL-1β,IL-2,IL-8,IL-12,tumor necrosis factor(TNF)-α,TNF-βなどの炎症性サイトカイン,好中球指向性サイトカイン,熱ショック蛋白が病態形成に関与する.

【疫学】

 欧米での発症率は低く,古代シルクロード沿いの各国に多発する.わが国では寒冷地域の北海道,東北地方に多く,女性より男性に多い.1991(平成3)年の全国調査では人口10万人に対し約1.5人とされている.B病の神経症状は5-30%の症例に認められる.

【経過・予後】

 神経B病で急性脳炎隨伴症例の多くはステロイド療法で回復する.10-15年間の後方視的研究から20-30%の患者に神経後遺症が残る.予後悪化因子は進行性の経過,寛解期の残存神経症状で,脳幹,脊髄障害例や髄液所見の悪い症例は回復が悪い.潜在性神経障害は臨床的に明らかな神経障害に進展しがちであり,静脈洞血栓症や頭蓋内圧亢進症は迅速で適切な治療で改善する.

◆診断のポイント

 B病の主症状は,①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,②結節性紅斑,毛嚢炎様・痤瘡様皮疹などの皮膚症状,③虹彩毛様体炎,網膜ぶどう膜炎などの眼症状,④外陰部潰瘍である.副症状は,①関節炎,②副精巣炎,③回盲部潰瘍などの消化器病変,④血管病変,⑤中等度以上の中枢神経病変である.

 診断基

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?