◆疾患概念
【定義・病型】
ビタミンが欠乏すると,認知機能などの精神機能が障害される.ビタミンの種類や欠乏期間により症状が異なる(表1)図.
【病態・病因】
ビタミンは補酵素として神経機能維持に必要である.摂食不良・偏食,アルコール過剰摂取,胃・十二指腸切除などが誘因となる.
【経過・予後】
アルコール過剰摂取者は症状がより重篤である.ビタミン欠乏による精神・神経症状は他の臓器障害による症状より予後が悪く,治療に難渋する.
◆診断のポイント
ビタミン欠乏症特有の症状を呈するが,すべての症状が現れるわけではない.誘因をもつ人が精神症状を呈すれば,ビタミン欠乏症を疑う.
精神症状に加え,貧血,末梢神経障害,浮腫,舌炎などの消化器症状,皮膚症状を伴うことがあり,診断の手がかりになる(表1)図.
血中のビタミンB1,B2,B6,B12,ニコチン酸,葉酸などの濃度を測定し,基準値以下の場合はビタミン欠乏症と診断する.B1欠乏症を疑えば,赤血球中のトランスケトラーゼ活性を測定することもある.
◆治療方針
A.治療方針の概要
ビタミン欠乏症予防のための日常の食生活を指導する.誘因を回避し,環境を整備する.
胃切除,十二指腸のblind loopがあれば,普段より少量のビタミンB12,B1,葉酸を総合ビタミンの形で投与するとよい.
意識障害を伴うウェルニッケ脳症の患者は生命の危機が迫っていることもあり,即刻大量のビタミンB1薬を投与する.
B.薬物療法
吸収障害も考慮して,最初は経静脈投与を試みる.その後,経口投与により経過観察する.コルサコフ症候群は補充の効果が乏しい.
1.ビタミンB1欠乏症(ウェルニッケ脳症)
[処方例]
アルコール過剰摂取者が意識障害を起こした重症例には下記1),軽症例には2)を投与し,その後3)を継続する.
1) アリナミンF薬注 1回500mg 1日3回 30分以上かけて点滴静注 3
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