◆疾患概念
【定義・病型】
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)(RLS)は,下肢を中心とした耐え難い不快な感覚が生じる疾患である.症状が夕方から夜にかけて強まることが多く,重度の不眠を生じるため,抑うつ気分や不安焦燥感,QOL低下などを伴うことが多い.「下肢の深部を虫が這うような」と形容される独特の感覚症状がメインであるために,病状を客観評価することが難しい.診断基準については,1995年に国際RLS研究班(IRLSSG)によって臨床症状の特徴に焦点を絞った診断基準が作成され,その後小改訂を受けて現在に至っている.しかし症状の多様性やRLSmimicsの存在などから,適切な診断や初期治療が行われているとはいい難いのが現状である.
【病態・病因】
RLSには明らかな誘因なく発症する本態性RLSと,腎不全や鉄欠乏性貧血,妊娠などによって誘発される続発性RLSとに分類される.中核群とされる本態性RLSでは,中枢神経内におけるドパミン作動系の異常が関与していると考えられている.パーキンソン病(PD)におけるRLSの合併例や,抗精神病薬の副作用によるRLSの症例報告,ドパミン作動薬によるRLSの治療効果など,臨床的な状況証拠が発端となって病態研究が進んでいる.
近年ではD3ノックアウトマウスを用いた研究によって,脊髄に投射する背後側視床下部ドパミンA11神経系の機能障害が症状発現に関与することが判明した.この神経系には下肢に生じる感覚過敏や不随意運動を抑制する働きがあること,ドパミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素は夜間活性が低下する概日性をもつことが,RLS関連要因として取り上げられる理由である.
【疫学】
欧米諸国では一般人口の5-15%,アジア諸国では健常者では1%未満,高齢者でも5%未満であり,欧米人に比べてアジア人では有病率が低いことが示唆される.一方で,加齢によ
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