診療支援
治療

単純部分発作
simple partial seizure
齋藤貴志
(国立精神・神経医療研究センター病院・小児神経科)

◆疾患概念

【定義・病型】

 部分発作は,最近焦点発作とよばれることも多いが,一側の大脳半球の神経ネットワークから生じるてんかん発作である.部分発作は,単純部分発作simple partial seizure(SPS)と複雑部分発作complex partial seizure(CPS)に分けられる.単純部分発作は,部分発作のうち意識減損を伴わない発作を指し,意識減損を伴う場合は複雑部分発作といわれる.単純部分発作のあとに複雑部分発作あるいはてんかん活動が両側半球を巻き込んで生じる二次性全般化発作が続く場合がある.発作中の意識の有無を評価することは困難な場合もあり,単純部分発作と複雑部分発作の区別は必ずしも容易ではなく,最近の発作分類でもこの用語は使用されていない.しかし,発作時の意識の有無は,診療や患者の生活管理上有用ではあることから,この用語は日常診療ではよく使われるのが実情である.

【病態】

 単純部分発作の症状は,次のように分けられる.

1)運動症状:定型的な異常な運動であり,強直,間代,脱力などがみられる.

2)自律神経症状:心窩部不快感や血圧,心拍の変動などがみられる.

3)感覚症状:しびれ,痛みなどの体性感覚,聴覚,視覚,嗅覚,味覚症状が生じる.

4)精神症状:既視感,恐怖などが起こる.

 これらの症状はてんかん活動が波及した皮質の部位に対応して出現する.例えば,片側の間代けいれんであれば,対側の運動野を原因とする発作であることが多い.このように症状とてんかん焦点の対応を考える必要がある.

 なお,小児期に最も頻度の高いてんかんである中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかんbenign epilepsy with centro-temporal spikes(BECT)は,多くは10歳以前に発症し,典型的には睡眠中の片側顔面あるいは口咽頭の単純部分発作が典型的な発作症状で,ときに二

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