診療支援
治療

アルコール使用障害
alcohol use disorder
松下幸生
(久里浜医療センター・副院長)
樋口 進
(久里浜医療センター・院長)

◆疾患概念

【定義・重症度】

 アルコール使用障害は飲酒に関連して重大な問題が生じているにもかかわらず,飲酒を続けることが本質的な特徴である.

 DSMの改訂にあたり,物質関連障害には大きな変更がなされた.DSM-IVではアルコール使用障害をアルコール依存とアルコール乱用に分けていたが,DSM-5ではアルコール使用障害に統一された.診断基準は表1に示すが,おおむねDSM-IVのアルコール乱用と依存を合わせたものになっている.項目内容の変更点として,アルコール乱用の基準に含まれていたアルコール関連の法律的問題は採用されず,ICD-10の診断基準(表2)には含まれていてDSM-IVにはなかった飲酒欲求がDSM-5で採用された.一方,該当する診断項目数によって重症度を定めている点も,DSM-IVにはなかった点である.

 改訂の理由として,①DSM-IVでは乱用と依存が階層的に区別されていたが,乱用の妥当性,信頼性は依存と比較して著しく低い,②乱用ケースの半数以上は1項目のみで診断されており,そのほとんどが危険な使用である,③乱用は依存より軽症と考えられるが,乱用にも役割義務をはたせないなど重症ケースも含まれる,④乱用を依存の前駆症状とみなすなど概念の混乱がみられる,⑤因子分析によると,乱用と依存は相互に強く相関しているといった点が挙げられている.

 診断基準は,①制御障害,②社会的問題,③危険な使用,④薬理効果という4つの群にまとめることができ,最初の4項目は飲酒に関する制御の障害に含まれ,基準5-7は社会的問題,基準8,9は危険な使用に関する項目であり,基準10は薬理効果としての耐性,基準11は同様に薬理効果としての離脱に関する項目になっている.

【病態・病因】

 アルコールは軽い多幸感や抗不安作用といった報酬効果を有し,薬理学的には中枢神経系の抑制効果が主である.アルコールを含む依存物

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