診療支援
治療

神経・筋肉系の心身症
psychosomatic diseases of the neuromuscular system
金光芳郎
(福岡歯科大学・心療内科学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 神経・筋肉系の心身症として挙げうる疾患としては,自律神経系(起立性調節障害,多汗症,心因性発熱など),運動系(ジストニア,声帯けいれん,チックなど),感覚系(頭痛,耳鳴,めまい症)など多岐にわたる.それらの多くは神経・筋が関与する機能的な疾患であると同時に,緊張や心理的なストレスにより悪化することが知られ,また心理的アプローチや心理・生理学的治療法が有効な疾患でもある.

【病態・病因】

 遺伝的素因を含む器質的な要因が関与する疾患,例えばDYT遺伝子群が関連するジストニアなどにおいても,心理的ストレスを契機に発症・増悪する症例があり,辺縁系と感覚運動回路の相互作用としてとらえられている.また自律神経系・感覚系の症状においては,その多くに心理的ストレスなどによる交感神経系の亢進の影響がみられる.抑うつに関連する身体症状においては,うつ症状としての感覚閾値の低下や自律神経系への影響が関与すると考えられる.

◆診断のポイント

 器質的要因を含めた正確な病態の把握を行う.前面にある器質的・機能的障害の診断とともに,心理・社会的な背景を十分に聴取していく.病歴上,明らかに,発症や増悪に関連した心理・社会的背景が認められる場合もあるが,患者自身が心因の関与を意識していないことも多く,治療の経過においても症状の詳細な聴取や検討を行っていく.心理治療が効果を上げるのと並行して身体症状が改善するなど,心理的状況と関連した病状の推移がみられて,心身相関がより明らかになることがある.

◆治療方針

A.治療方針の概要

 器質的・機能的病態と症状に対応した原因治療や対症療法を十分に行いながら,心理的側面に配慮した,環境調整を含む心理療法,心理・生理学的治療法を組み合わせて治療を行っていく.

B.薬物療法

 原因治療および対症療法としての薬物療法を行う.局所性ジストニアについては,ボツリヌス毒

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