◆定義
抗精神病薬とは統合失調症の治療に用いる薬物を原義とするが,それ以外の疾患にみられる幻覚妄想状態や不穏興奮状態にもしばしば用いられている.双極性障害の躁状態やせん妄に対してもしばしば用いられる.さらに抗うつ薬に反応しないうつ状態や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に反応しない強迫性障害などにも付加的に使用されることがある.現在のところわが国における保険適用は統合失調症に限られている薬物が多いが,臨床的な使用範囲はそれを大きく超えて広がり,器質性および症候性精神疾患,気分障害,不安障害に及んでおり,抗精神病薬という名称自体が必ずしも実際にそぐわなくなりつつある.
歴史的には,抗精神病薬は1952(昭和27)年フランスのDelayとDenikerによって統合失調症に対する効果が発見されたクロルプロマジン薬を嚆矢とし,ハロペリドール薬が続いた.当時はまだドパミンが神経伝達物質とし
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