診療支援
治療

箱庭療法
sandplay therapy
武野俊弥
(武野クリニック・院長(東京))

◆定義

 英国のローウェンフェルトによって子どものための精神療法として考案された技法を,スイスのカルフがユング心理学をもとにさらに発展・完成させた治療法である.内法57×72×7cmの内側を青く塗った箱に2/3ほど砂を入れ,その砂箱の中に種々のミニチュア玩具(人・動物・植物・乗り物・建造物・橋・柵・怪獣・ビー玉などのほかにタイル・ビーズなどの素材や石・貝殻・木片などの自然物,さらに綿や色とりどりの梱包用クッション材などの不定形のものもそろえておく)を用いて患者に好きなものを作らせる.なお,砂箱の内側を青く塗るのは,砂を掘ったときに川や海などの水を表現できるようにするためである.カルフは治療者と患者の人間関係を重視し,それを「母と子の一体性」という言葉で表現した.その治療関係を基盤とした「自由であると同時に保護された空間」のなかで,患者に内的イメージを表現する場を与えることにより,患者の無意識に内在する自己治癒力が大いに賦活され最大限に発揮されることになる.それが本療法の治療原理の根幹であると考えられている.

◆特徴

 西洋起源の治療法ではあるが,200年以上にわたる箱庭の伝統をもち,言語化を経ないでイメージ表現を直感的に理解し洞察することにたけた日本人の心性にとてもふさわしい方法であったため,全世界のなかでもわが国において最も普及し有効に活用されている.

 上述のローウェンフェルトは,同時代の児童分析家であるメラニー・クラインやアンナ・フロイトがあまりにも子どもの遊びをフロイトの精神分析理論に基づいて解釈しすぎることを批判し,解釈なしに治療できる方法としてこの技法を思いついたと述べている.その原点からもわかるように,箱庭療法の特徴として基本的に解釈せずに,患者の内的イメージが表現されていく過程をともに体験し,その表現された作品をともに味わう態度が重視されている.子どもの場合は,遊び

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