診療支援
治療

電気けいれん療法
electroconvulsive therapy(ECT)
上田 諭
(日本医科大学講師・精神医学)

◆適応と方法

 電気けいれん療法(ECT)は,薬剤抵抗性ないし不耐性の内因性うつ病,緊張病性の躁うつ病病態,緊張型または興奮著明な統合失調症,精神病病像を伴うパーキンソン病などを主たる適応とする精神科治療に必須の治療法である.ところが,その実施方法がいまだに浸透していないことが治療倫理にかかわる大きな問題点である.短パルス矩形波(以下,パルス波)治療器によるECTで効果を得るためには,麻酔,刺激用量設定,発作評価などにいくつかのパラメータ設定と評価が不可欠である.

 なお,本項の内容は,米国精神医学会出版局の最新の教科書(2010)と国内のガイドラインといえる「電気けいれん療法(ECT)推奨事項 改訂版」(精神神経誌,2013)に拠っている.また,本項でいうECTは,麻酔管理のもとでの無けいれん性でパルス波治療器を用いる手法を指す.本手法が世界標準のECTであり,これを「修正型ECT」とか「m-ECT」とよぶのはもはや適切ではない.

◆効果判定――発作波の有効性評価

 誘発した発作が臨床効果につながる発作であるかどうか.効果的なECTを実現するために,その判定は欠かせない.発作が一定時間生じてもそれが「不適切な発作」であれば,次の施行の回には刺激電気量を上げる必要がある(次項に詳述).

 重要なのは主に発作時脳波により以下を確認することである.

 ①規則的な対称性高振幅発作波,②発作後抑制postictal suppression(p.i.s.),③一定の発作持続時間であり,これらがそろうと④交感神経系の興奮を伴う.これらすべてが認められることを確認できれば,それは臨床効果に確実につながる発作である.

 よくある誤解は,「けいれん発作が長く出れば効く」「25秒以上脳波上発作があれば有効」という思い込みであるが,発作持続時間は良好な発作波と発作後抑制を導くために最低限確保されていればよく,

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