Ⅰ.腸閉塞(イレウス)
◆疾患概念
さまざまな要因で消化管内容物の通過障害が起きる状態を指す.消化管の物理的な狭窄などにより起こる機械的イレウスと,消化管の蠕動低下などによって起こる機能的イレウス(麻酔性イレウス)に分類される.ほとんどは機械的イレウスであるが,精神科領域では向精神薬の影響で機能的イレウスの頻度も比較的多い.
◆診断のポイント
悪心・嘔吐,腹痛,腹部膨満,排便停止などが典型的な症状である.すべてそろわないことも多々あるし,イレウスであるが排便がみられることもある.また抗精神病薬などを服薬しているとその制吐作用により悪心・嘔吐がみられないこともある.反跳痛・筋性防御などの腹膜刺激症状が加わると重篤であることが多い.
腸音は機械的イレウスでは亢進し機能的イレウスでは減弱していることが多いが,機械的イレウスでも血行障害を伴う重篤なもの(複雑性イレウス)だと減弱していることがある.その際は発熱や腹膜刺激症状,著しい炎症反応の有無などが鑑別のポイントとなる.患者のなかには精神症状のため痛みを訴えない者もいる.この場合,腹部を丁寧に触診しながら痛みで患者の表情に変化がないか観察をしていく必要がある.
腹部単純X線写真で腸管内のニボー(鏡面像)や腸管の拡張(小腸およそ3cm以上,大腸およそ6cm以上)がみられる.ニボーは立位もしくは側臥位撮影で確認する.また腸管穿孔に伴う腹膜炎のため2次的にイレウスを起こすこともあるので,発熱や腹膜刺激症状などがあれば立位または坐位で胸部単純X線撮影を行い,横隔膜下のfree air(遊離ガス)の有無を確認する.立位・坐位がとれない場合は空気の移動時間を考慮し左側臥位を数分間保ったのちに撮影し,右横隔膜下-肝表面のfree airを確認する.
CT撮影が可能であれば閉塞起点の確認のため行う.また腹部CTを肺野条件でみると少量のfree air
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