診療支援
治療

医療観察法と精神鑑定
act on medical care and treatment for patients who have caused serious cases under the condition of insanity/psychiatric examination
永田貴子
(国立精神・神経医療研究センター病院・第二精神診療部)
平林直次
(国立精神・神経医療研究センター病院・第二精神診療部長)

医療観察法

◆概要

 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)は,「心神喪失または心神耗弱の状態で,殺人,放火等の重大な他害行為を行った者に対し,適切かつ継続的な医療を実施することによりその病状を改善させ,以て同様の行為の再発の防止を図り,社会復帰を促進すること」(1条1項)を目的として,2005(平成17)年7月15日に施行された.

 この法律の対象となる精神障害者は「対象者」,また,法の対象となる他害行為は,殺人,放火,強盗,強制わいせつ,強姦,および傷害(傷害致死を含む)の6種であり,「対象行為」とよばれる.

◆成立の背景

 従来,わが国において重大な他害行為を行った精神障害者の医療に関する法律は存在せず,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下,精神保健福祉法)で規定された措置入院により医療が行われていた.しかし,措置入院には看過できない問題が指摘されてきた.1つは,措置入院に関する入退院決定を行う精神保健指定に過度の責任が求められていたことである.また,措置入院の医療内容,入院期間,行動制限の実施状況などには少なからぬ地域間格差や施設間格差が存在していた.さらに,精神保健福祉法には退院後の通院医療に関する規定がなく,しばしば治療中断が起こり,継続的な医療が確保されていなかった.

 これらの事情により,触法精神障害者に対する,司法機関と医療機関の連携による継続的な専門的医療の提供と,適切な処遇システムの整備が期待されていた.

◆処遇システム

(図1)

A.開始の手続き

 医療観察法の手続きは,以下に述べる対象者について,検察官が地方裁判所(以下,裁判所)に対し申し立てを行うこと(法33条1項)により開始される.

①対象行為を行い,心神喪失もしくは心神耗弱者であることが認められ,不起訴処分となった者

②対象行為について,心神喪失

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