診療支援
治療

溺水
drowning
西山和孝
(北九州市立八幡病院小児救急センター・部長)

●病態

・溺水は,2002年にWHOより液体に浸漬(submersion)/浸水(immersion)することで呼吸障害を生ずる過程と定義され,呼吸障害を認めないものは溺水という言葉は用いず水難救助(water rescue)として区別する.

・男児に多く,1~4歳次いで5~9歳に起こりやすい.2017年人口動態統計によると不慮の溺死および溺水は,5歳以上では交通事故に続く不慮の事故の死亡原因となっている.

・てんかんを有する場合,溺水のリスクは15~19倍高くなり,説明のつかない溺水や有能な泳者の溺水による死亡ではQT延長症候群やカテコールアミン性多形性VT(CPVT)の可能性が示唆されている.

●治療方針

A.事故現場

 酸素化の改善と一次救命処置(BLS)による自己心拍再開を目標として早期に救急隊へつなげる.

 救助後,直ちに意識と呼吸の確認を行う.呼吸をしている場合は回復体位を保ち救急隊を待つが,呼吸がない場合は溺水による心停止が酸素欠乏によって引き起こされる呼吸原性心停止であるため,酸素化のために補助換気を行い,心肺蘇生(CPR)を開始する.

B.救急外来

 適切な酸素化と換気,循環の確立と神経学的機能の評価を行う.

 ABCDEアプローチに準じた評価と介入を行う.気道確保,高流量酸素投与を開始し,呼吸数や呼吸音など呼吸状態を評価する.呼吸・循環・意識が安定しているならば酸素投与量を減量しながら経過観察を行うが,全肺野での肺雑音や意識障害は挿管を考慮すべき所見となる.挿管などにより酸素化の改善をはかっても低血圧を認める場合は急速輸液投与を行うが,血管収縮薬や陽性変力薬が必要となることもある.

 意識はGlasgow Coma Scale(GCS)(「意識障害」)で評価し,より詳細な評価はあとで行う.繰り返し評価することで改善あるいは悪化しているかを確認する.

 体温管理は脳蘇生の重要な

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