診療支援
治療

急性喉頭蓋炎
acute epiglottitis
辻 聡
(国立成育医療研究センター病院救急診療科・診療部長)

●病態

・急性喉頭蓋炎は主にインフルエンザ桿菌(Hib)感染による急激な喉頭蓋周囲の腫脹から上気道の狭窄をきたす疾患である.症状が進行すれば上気道狭窄より挿管困難をきたし,生命の危機に瀕するため対応には細心の注意を払う必要がある.

・北米ではHibワクチンの普及により5歳以下の罹患頻度が減少したとの報告があるが,わが国でも同様に今では遭遇する機会が非常にまれになった.

・臨床症状では突然の高熱および活気不良の他,上気道狭窄症状を自ら緩和しようと両手を膝に着き下顎を前方に突き出した姿勢(tripod position)や匂いを嗅ぐ姿勢(sniffing position)をとる.咽頭痛や流涎,嗄声,吸気性喘鳴を認めるが,通常クループ症候群のような犬吠様咳嗽を呈することはなく,鑑別に有用な所見である.

●治療方針

 本症を疑えば上気道狭窄の(呼吸困難の)程度を評価し,toxicな印象があればタイミングを失することなく気道確保のマネジメントを検討する.挿管処置は吸入麻酔下に自発呼吸を残した状態で行うべきである.喉頭蓋および気道の腫脹が著明なため,通常よりも1~2サイズダウンした気管チューブを用いる.上気道狭窄時の処置には時間的な余裕がなく,処置に手間取れば容易に低酸素をきたすため,院内の医療資源を有効活用し麻酔科医の協力のもと手術室で処置すべきである.

 上気道狭窄の評価としてX線撮影は推奨されない.臨床所見以上に得られる情報が少なく,刺激で患児を泣かせることは上気道狭窄症状を一層悪化させることになる.

 血液検査では細菌感染症の評価とともに血液培養を行い,起炎菌を想定しセフォタキシム(CTX)などの広域スペクトラムの抗菌薬を投与するが,上気道狭窄症状が高度な場合には同様に刺激を避けるため鎮静・気道確保後に施行する.

 上気道狭窄症状が高度な場合の処置としては,麻酔科医に依頼し気道を確保するが,

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