腹腔内に貯留した腹水やガスを採取し,診断に用いたり腹腔内から排出したりするために行われる.腹水の原因は,成人では肝硬変・癌性腹水などによるものが一般的だが,小児では胎児水腫,乳び腹水,代謝性疾患,胆道閉鎖症などの肝疾患,ネフローゼ症候群,消化管穿孔や胆道穿孔,外傷などがある.腹水は生理的にもみられ,経過観察で改善が想定される場合や少量で全身状態がよい場合は穿刺しないことも多い.
特に近年の画像診断の進歩で,診断目的での穿刺は侵襲を伴うため必要性は少なくなっている.また小児でも腹腔鏡が一般的に行われるようになったため,外傷の場合,診断・治療目的で最初から腹腔鏡検査を選択し,腹腔穿刺を省略することも増えている.
A.処置前
a)腹部超音波検査で穿刺可能な部位を決定し,マーキングを行う.穿刺部位は,上下腹壁動静脈を避けた腹直筋鞘の外側で,臍と左上前腸骨棘を結んだMonro-Richter(モンロー・リヒター)線の外1/3で穿刺することが一般的といわれてきたが,超音波検査で腹壁と浮遊する腸管の間に十分なスペース(echo free space)があれば,そこを穿刺部位としたほうがよい.
b)排尿させ膀胱内を空虚にし,緊急時でなければ数時間前より禁飲食とする.
c)心電図モニター,パルスオキシメーターなど全身のモニタリングや末梢静脈ラインの確保は不可欠である.
d)穿刺時に体動があると腸管損傷の危険が高くなるため,十分な人員を確保し四肢を抑制する.安静が保てない場合は,静脈麻酔などによる鎮静や全身麻酔が必要である.
e)穿刺後のドレナージに長時間かかることがあり,体位は通常仰臥位で行う.しかし腹水が多量に貯留していると,横隔膜を圧排し呼吸苦が出現することもある.その場合には,上半身を45度程度挙上した半坐位の体位〔Fowler(ファウラー)体位〕で行う.
B.穿刺・ドレナージ手技
a)