診療支援
治療

経腸栄養
enteral nutrition
新津健裕
(埼玉県立小児医療センター集中治療科・副部長)

 小児における栄養管理の方法は,経腸栄養と経静脈栄養に大別されるが,消化管機能が正常である場合には,経腸栄養が第1選択となる.経腸栄養は経静脈栄養に比し,投与経路が生理的であり,カテーテル留置に伴う合併症も回避でき,またbacterial translocation(腸内細菌の生体内移行)や肝障害,腸管上皮の萎縮などが起こりにくいという利点もある.

A.投与経路

 哺乳・経口摂取は,消化吸収機能面でも精神面でも最も生理的であることから,基本的には経口投与を第一に考慮する.

 経口摂取に問題がある,もしくは病態などにより経口摂取が困難な場合で消化管が機能し,消化管の運動機能,消化吸収機能が部分的にも使用できる場合には,適切な注入部位からの経管栄養を検討する.

 経管栄養の投与ルートとしては,経鼻胃管か経鼻空腸チューブがある.胃食道逆流が明らかな病態や胃排泄遅延が存在するために経胃投与が困難な場合には,経空腸(幽門後)投与を検討する.長期投与の場合には胃瘻や腸瘻の造設を考慮する.

B.経腸栄養剤

 経腸栄養に用いられる栄養剤は,半消化態栄養剤と消化態栄養剤,成分栄養剤に分けられ,さらに医薬品として提供されるものと食品扱いとなっているものに分類される(表1).

 成分栄養剤は主にデキストリンとアミノ酸で構成され,脂肪の含有はきわめて少ない.消化態栄養剤はデキストリンとアミノ酸,ペプチドで構成されている.いずれもほとんど消化を必要とせずに吸収され無残渣であるが,浸透圧が高くなるために下痢を起こしやすい.一方で,半消化態栄養剤は窒素源が蛋白質であり,脂肪も必要量が含まれる.

 消化吸収機能に異常がない場合には,半消化態栄養剤が第1選択となるが,患児の病態や症状,使用目的により使い分ける.

C.経腸栄養の実際

1.栄養チューブの留置

 経口摂取が困難な場合には経管栄養を行うが,そのルートの第1選択は最も簡

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