診療支援
治療

輸血
blood transfusion
平林真介
(北海道大学病院小児科)

 輸血療法は今日の確立されたシステムにおいて,単に薬物療法や手術治療の一部と誤解してしまうが,長い歴史と膨大な経験のうえに今日の輸血療法があることを理解されたい.輸血に用いる血液製剤は日本赤十字社の献血事業を通じて供給され,製剤管理,適合血選択,患者への適切な輸血,合併症対策,輸血後感染症管理などが一連の医療である.厚生労働省により「輸血療法の実施に関する指針」および「血液製剤の使用指針」が示されているほか,日本輸血・細胞治療学会による各種ガイドラインを参照されたい.

A.血液製剤の種類と使用指針

1.赤血球製剤

 第一義的な目的は,末梢循環系へ十分な酸素を供給することにあるが,児の全身状態や活動性,症状の有無のほか,貧血進行の程度などを考慮に入れて判断する.一般状態が安定している場合はHb 7g/dLを赤血球輸血の目安とし,呼吸循環動態が不安定な場合にはHb 10g/dL程度を目安とする.急速な大量輸血は輸血関連過剰負荷(TACO:transfusion-associated circulatory overload)の原因となるため十分注意する.

2.血小板製剤

 止血(主に血小板数2~5万/μLのとき)と,出血予防(主に血小板数1万/μL以下あるいは時に1~2万/μL)を目的とした投与があるが,その適応は血小板数,出血症状の程度および合併症の有無により決定することが基本である.一律に血小板数の減少のみで輸血すべきではない.活動性出血がある場合は,原疾患の治療を十分に行うとともに血小板数5万/μLを目標として補充する.

 外科手術や腰椎穿刺は血小板数5万/μL以上を,骨髄穿刺では血小板数1万/μL以上を施行前の目標と考える.感染症や脾腫などがあるときは血小板増加は少なくなるが,輸血後の止血効果が不十分あるいは血小板数上昇が予想を下回る場合には,抗血小板同種抗体の存在も想定すべきであ

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