A.適応疾患
吸入療法は気道の病変部に直接薬剤を到達させることにより治療効果を期待するもので,主に以下の疾患で用いられる.治療の詳細については各疾患の項(「乳幼児喘息」→,「クループ」→)を参照.
a)気管支喘息:長期管理薬として吸入ステロイド,長時間作動性吸入β2刺激薬,および両者の配合剤,抗アレルギー薬などの吸入.急性増悪(発作)時の治療として短時間作用性吸入β2刺激薬の吸入
b)クループ:発作時にアドレナリンの吸入
薬剤を効率的に吸入させるためには年齢や状況に応じて薬剤の種類,吸入機器や吸入補助具を適切に選択する必要がある.
気管支喘息の長期管理薬としての吸入療法では,アドヒアランスの維持がきわめて重要であり,導入時だけでなく繰り返し吸入指導を行う.ステロイド吸入後にはうがいをする(詳細については「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」を参照).
B.薬剤と吸入方法の選択
吸入には液体の薬剤を霧化する装置(ネブライザー)を使用する方法と,定量吸入器を使用する方法があり,年齢により使い分ける(表1図).
1.ネブライザー
ネブライザーには霧化の方法によりジェット式,メッシュ式,超音波式がある.耐久性のあるジェット式が汎用されるが大型で作動音が大きい.メッシュ式は小型で騒音が小さいが高価で耐久性が低い.普通呼吸で吸入可能なため乳幼児でも使用できるが,吸入時間がかかる.
マウスピース使用時に鼻呼吸になる場合はノーズクリップを併用する.マスクタイプでは顔に密着させないと,1cm離しただけでも吸入薬剤量が半減する.また乳幼児が啼泣している状態でも呼吸器系への薬剤到達率が低下する.
2.定量吸入器
a.加圧噴霧式定量吸入器(pMDI:pressurized metered-dose inhaler) pMDIでは吸入器の薬剤をエアロゾルとして噴霧して吸入する.直接吸入するには噴霧