A.新生児の薬物療法の注意点
小児における薬物療法では常に,薬物代謝の発達的変化を考慮する必要がある.特に新生児では胎外環境への適応期であることに伴い急激な変化が生じており,加えて早産などの要因が加わることで,新生児における薬物の用法用量設計は複雑なものとなる.そのため在胎週数,出生時体重,生後日齢などで細かく用法・用量が規定されている薬剤も多い.しかし,その根拠となる薬物動態情報は多くの場合限定的である.新生児に薬物療法を行う場合は,使用する薬剤について可能な限り同じ状況(在胎週数,出生時体重,修正週数,生後日齢など)における分布容積,半減期などの薬物動態情報を集め,個別に投与法を検討することが必要になる.
また新生児の薬物療法では,新生児高ビリルビン血症への影響を常に念頭におく必要がある.高ビリルビン血症では,ビリルビンがアルブミンより遊離することで脳へ移行し生じるビリルビン脳症,核黄疸が問題となるが,セフトリアキソンなど一部の薬剤はビリルビンのアルブミンからの遊離を生じるため,新生児においては原則的に使用が禁忌となる.
これまで述べたような事由により,小児のなかでも特に新生児では,頻用医薬品においても添付文書上「安全性が確立されていない」と記載されている場合が多い.必要上やむをえず,適応外使用を継続せざるをえない場合も多いが,同時に新生児領域における治験などを推進し,用法・用量未確定,適応外使用の2つの問題の解決をはかっていかなければならない.
B.新生児薬物離脱症候群
児と薬物の関係は,母の胎内にいる出生前より始まっている.母が摂取した薬物は,胎盤という関門を通過して胎児に影響を及ぼす.胎盤は,分子量が小さく,脂溶性が大きく,イオン化傾向が低く,アルブミンなどの血漿蛋白に結合率が低い薬物が通過しやすい.胎盤を通過した薬物が胎内で胎児に有害事象を生じることを胎児毒性とよ