●病態
・新生児における低酸素性虚血性脳症(HIE)は,新生児の娩出前後(周産期)に,胎児に酸素とエネルギーを供給している胎盤血流の遮断によって生じる疾患である.
・低酸素に引き続きエネルギー低下が生じると,細胞内Caイオン濃度の上昇が起こり,引き続いて不可逆的な脳障害が生じる.
・発症頻度は出生1,000人に対して1~2人であるが,重症例は生命にかかわり,救命された場合にも半数近くに永続的な後遺障害(脳性麻痺や認知障害)を生じる重篤な疾患である.
・脳性麻痺は運動障害だけでなく,しばしば呼吸障害やてんかんなどを合併し,重症心身障害の最大の原因の1つである.
●治療方針
まず新生児が出生した場合には,2015年版の新生児蘇生法のアルゴリズムに従って蘇生を行う(詳細は「新生児蘇生法」→).適切な蘇生を行っても,在胎36週以上で下記の基準を満たすときはHIEの存在が強く疑われ,低体温療法の適応になる場合