●病態
・新生児における低酸素性虚血性脳症(HIE)は,新生児の娩出前後(周産期)に,胎児に酸素とエネルギーを供給している胎盤血流の遮断によって生じる疾患である.
・低酸素に引き続きエネルギー低下が生じると,細胞内Caイオン濃度の上昇が起こり,引き続いて不可逆的な脳障害が生じる.
・発症頻度は出生1,000人に対して1~2人であるが,重症例は生命にかかわり,救命された場合にも半数近くに永続的な後遺障害(脳性麻痺や認知障害)を生じる重篤な疾患である.
・脳性麻痺は運動障害だけでなく,しばしば呼吸障害やてんかんなどを合併し,重症心身障害の最大の原因の1つである.
●治療方針
まず新生児が出生した場合には,2015年版の新生児蘇生法のアルゴリズムに従って蘇生を行う(詳細は「新生児蘇生法」→).適切な蘇生を行っても,在胎36週以上で下記の基準を満たすときはHIEの存在が強く疑われ,低体温療法の適応になる場合がある.
a)生後10分のApgarスコアが5点以下
b)10分以上の持続的な新生児蘇生(気管挿管,陽圧換気など)が必要
c)生後60分以内の血液ガスでpH 7未満
d)生後60分以内の血液ガスでbase deficitが16mmol/L以上
A.上記基準を満たさない場合
一般的な保温,呼吸サポート,ルート確保,輸液管理などを行う.
B.上記基準を満たした場合
HIEの存在が強く疑われ,脳症の程度が中等症から重症の場合には,低体温療法の適応になる.その判定では意識障害(傾眠,鈍麻,昏睡)および少なくとも以下のうちの1つを認める場合に適応ありと考えられる.
a)筋緊張低下
b)「人形の目」反射の消失もしくは瞳孔反射異常を含む異常反射
c)吸啜の低下もしくは消失
d)臨床的けいれん
低体温療法は生後6時間以内に開始を行う必要があり,院内でその体制がない場合には体制が整った施設へのすみやかな搬送が必
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