診療支援
治療

胎便吸引症候群
meconium aspiration syndrome(MAS)
田中太平
(名古屋第二赤十字病院第一新生児科・部長)

●病態

・胎児が低酸素血症に陥ると胎便を排泄し,それを吸い込めば胎便吸引症候群(MAS)となるが,低酸素血症がなくても在胎週数とともに腸管が成熟するため,羊水混濁の頻度は増加する.

・胎便による末梢気道の完全閉塞(無気肺)と不完全閉塞によるチェックバルブ(過膨張)が混在し,胎便によって肺サーファクタントも失活する.

・肺血管れん縮による新生児遷延性肺高血圧症(PPHN:persistent pulmonary hypertension of the newborn),過膨張によるエアリーク,胎便による化学的肺炎を続発する.

・低酸素性虚血性脳症,出血性肺浮腫/肺出血,多臓器不全にも注意する.

・重症度の判断:胸郭の過膨張,陥没呼吸が強いほど酸素化が悪く,筋緊張低下や蒼白な皮膚色が目立つほどアシドーシスも強い.

●治療方針

 a)呼吸障害がごく軽度なら羊水混濁があっても気管吸引は不要.

 b)呼吸障害があれば気管吸引を行い(吸引物は塗抹・培養検査),胎便が引けなくなれば生理食塩液(生食)1~2mLを注入して再度吸引する.

 c)吸引物の色が比較的濃ければ生食もしくは肺サーファクタント(S-TA)で気管洗浄を行い,その後は人工呼吸器で管理する.

 d)呼吸管理は同期的間欠的強制換気(SIMV:synchronized intermittent mandatory ventilation)から始め,陥没呼吸の遷延,酸素化不良,気胸を合併すれば高頻度振動換気(HFO:high frequency oscillatory)に移行する.SIMVよりもHFOのほうが吸引物が排出されやすく,努力呼吸が減って人工呼吸器に同調することも多い.HFOとS-TAの投与によって相乗効果が期待できるが,HFOはピストン式などハイパワーの機種を選択することが必須.

 e)胎便混じりの気管吸引物が続くときもHFOに切り替えるが

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