A.治療方針の意思決定
日常臨床の場面では,治療方針のみならず,常にさまざまな意思決定が行われている.治療に関する意思決定の大半は医学の専門知識や経験,臨床推論から導き出される決定であり,そのような意思決定が医師によって行われることに問題はないが,意思決定に至るまでのプロセスについて,医師の独善性やパターナリズムが批判の対象となることがある.
自ら意思決定能力を有しない新生児では,治療方針のみならず,さまざまな意思決定に際し患児の保護者(多くの場合,児の両親)との意思疎通が必要不可欠だが,意思決定を巡って生じる不満や批判のほとんどは治療方針そのものよりも,決定過程における不十分なコミュニケーションに起因すると考えられる.
治療を巡る意思決定が児の症状という「事実」から導き出される場合には,たとえその決定が少々一方的であっても議論や批判の対象となることはないが,生命予後や後障害の程度など必ず