●病態
・出生時に存在する形態的・機能的異常を先天異常と称する.先天的な原因(遺伝子異常・染色体異常)や胎児の発生過程によって生じたものをすべて含む.
・先天異常が,身体に1つ認められる場合と複数個認められる場合に大別する.複数個認める場合には症候群を推定し,遺伝学的検査によって確定することができる.
・先天異常の原因を明らかにすることは合併症の早期発見・治療,長期的な予後,次子の再罹患率の予測に直結し,患者・家族のQOLの向上に貢献する.
●治療方針
全身の詳細な形態異常の診察においては,大奇形のみならず小奇形についても先天異常症候群の診断の重要な手がかりになる.所見の取り方の詳細は成書を参考にされたい.
先天異常の原因は,単一遺伝子の変異・染色体異常・環境要因に大別される.ただし,明らかな原因が不明の場合が半分以上(65~70%)を占める.疾患の原因を想定しながら検査方針を検討する.
A.単一遺伝子の変異(15~20%)
特定の症候群を疑った場合,各々の確定診断となりうる検査(生理・生化学的検査を含む)を実施する.次に発端者から血液や各種組織を用いて,遺伝子解析を実施する.
B.染色体異常(5~10%)
ヒトの染色体数の異常・構造異常,ゲノム再構成による遺伝子切断により,全身にさまざまな先天異常を生じる.
1.数の異常
トリソミー21(ダウン症候群)は,最も発生頻度(1/700~1,000人)が高い常染色体異常である.次いでトリソミー18,トリソミー13などが(1/5,000~6,000人)生じる.これらは臨床症状から推測可能であり,染色体検査(G分染法)により診断が確定できる重要な疾患群である.
2.構造異常
配偶子形成過程で染色体の一部に欠失・重複・挿入などが生じる.例えばWolf-Hirschhorn syndrome(4p-)は,特徴的な顔貌に加え,成長障害,心疾患,けいれんな
関連リンク
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