●病態
・Sotos(ソトス)症候群は,国内症例の解析により長崎大学の黒滝,松本らがその原因がNSD1遺伝子のハプロ不全であることを示した先天異常症候群である.ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子であり,近年APC2遺伝子が下流ターゲットであると報告された.
・①出生前から始まる過成長,②特徴的な顔貌と身体所見(大頭,目立つ額,薄い前頭部頭髪,眼間開離,尖顎,非進行性脳室拡大,大きい手足,すべすべした皮膚,骨年齢促進),③中等度の知的障害,運動発達遅滞の3主徴から臨床診断が可能である.
・5q35のNSD1領域を含む約3.5Mbの染色体微細欠失による欠失例とNSD1の機能喪失変異による変異例があり,前者はFISH法により診断が可能.欠失が証明されなければ変異解析を行う.欠失例のほうが身体的合併症が多く,そのために過成長の程度は変異例よりも軽度である.
・鑑別診断としてBeckwith-Wiedemann(ベックウィズ・ウィーデマン)症候群,Simpson-Golabi-Behmel(シンプソン・ゴラビ・ベーメル)症候群,Weaver(ウィーバー)症候群など.
●治療方針
計画的な診療による合併症の早期診断と治療,自然歴情報に基づく成長発達支援と療育を行う.年齢により留意する症状が異なるので,フォローアップガイドラインに拠って診療を行うことが望ましい.
乳幼児期は診断に至った時点で,先天性心疾患および腎臓泌尿器系の形態異常の有無を確認する.通常脳室拡大は非進行性でありシャント術を要しない.眼科的評価として1歳頃には斜視を,3歳以後は屈折異常の有無を調べる.運動発達遅滞はほぼ全例にみられる.始歩前に低緊張による扁平足に対する補装靴の作製,歩行後は関節の過伸展や側弯の進行などを小児整形外科医に依頼する.過成長は幼児期から学童期初期がピークであり,身長は徐々に平均値に近づくことが多い.てん