診療支援
治療

出生前診断を考慮する際,留意すべきこと
key factor to note about the prenatal diagnosis
福島明宗
(岩手医科大学臨床遺伝学科・教授)

A.出生前診断

 広い意味では胎児の感染症や貧血などの疾患の有無を出生前に検査する診断法も含まれるが,ここでは胎児の染色体や遺伝子が原因の疾患や形態異常の有無について検査する出生前遺伝学的検査のことである.診断の目的は「児の健康の向上や,適切な療育環境を提供すること」であり,さらに「何らかの疾患を有する可能性が高いと思われる場合,その正確な病態を知る目的」で主に産婦人科医師によって実施される.

 しかし母体血を用いた胎児染色体検査(NIPT:non-invasive prenatal testing)では,実施責任者あるいは施設・機関責任者は「産婦人科の医師,または小児科の医師であることを要する」としていること,また小児科領域で対応する両親は生殖年齢にある者も多いことから,小児科医においても出生前診断を理解することが必要である.

B.出生前診断の種類

 非確定的(非侵襲的)検査と確定的(侵襲的)検査に大別される.

1.非確定的(非侵襲的)検査

 超音波検査には「通常超音波検査」と「胎児超音波検査」の2種類がある.「通常超音波検査」は妊婦健診時において,妊娠週数決定の補助,胎児発育や胎位胎向の評価,胎児付属物の評価,子宮・卵巣の状態の確認などを行うことを目的としているが,「胎児超音波検査」は胎児形態異常の検出,染色体疾患の検出を目的とした出生前遺伝医学的検査である.ただし「通常超音波検査」において胎児形態異常が見つかる場合もあり,これら異常が発見された場合の告知範囲など,事前のインフォームド・コンセントが求められる.

 母体末梢血によるものには母体血清マーカー検査やNIPTがある.NIPTは21,18,13番染色体の数的変化の診断に対応し,陰性的中率が約99.9%である.しかし陽性的中率の精度や判定保留の問題,また構造的変化は診断できないことから次に述べる確定的検査の実施が必要である.

2.

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