診療支援
治療

ガラクトース血症
galactosemia
伊藤哲哉
(藤田医科大学小児科学・教授)

●病態

・ガラクトース(Gal)は肝でUDPグルコースへと変換されるが,この経路の先天的酵素活性欠損により生じる疾患をガラクトース血症という.

・血液中Galが高値となる状態を「高ガラクトース血症」と称するが,この原因にはガラクトース血症以外にも門脈体循環シャント,シトリン欠損症やその他の胆汁うっ滞をきたす疾患などが知られている.

・ガラクトース-1-リン酸(Gal-1-P)ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)欠損症(ガラクトース血症1型):新生児期早期から不機嫌,下痢,嘔吐などの消化器症状や体重増加不良などで発症し,低血糖,白内障,肝障害,凝固系異常,溶血性貧血などを呈する重篤な疾患であり,乳糖除去を行わなければ致死的である.

・早期診断され,治療,管理を行っても慢性期に精神神経症状や卵巣機能不全を生じることが知られており,長期にわたる管理が必要である.

・ガラクトキナーゼ(GALK)欠損症(同2型):消化器症状などはきたさず白内障が唯一の症状である.

・UDPガラクトース-4-エピメラーゼ(GALE)欠損症(同3型):重症となる全身型は非常にまれで日本人症例は報告されていない.日本人では酵素欠損が赤血球や白血球に限られる末梢型のみ報告されており,特に症状を呈さず治療は不要とされている.

●治療方針

 上記3疾患とも常染色体劣性遺伝疾患で,新生児マススクリーニング(NBS)対象疾患である.ガラクトース血症1型,2型では食事療法による乳糖除去を行う.特に1型では迅速な対応が必要であり,NBSの結果で1型が疑われれば,直ちに乳糖除去,すなわち新生児期,乳児期であれば大豆乳か乳糖除去ミルクを使用し,離乳期以降では乳製品,乳糖の除去を行う.3型は治療を要しないが,Gal,Gal-1-Pの著しい高値がある場合は念のため全身型の可能性も考慮して食事制限を行うこともある.その他の疾患を含めNBS陽性

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